NEW ORDER

M&Aの現場

M&Aアドバイザーを何で選ぶか

手数料と利益相反の見極め方

CONTENTS11の見出し
  1. 仲介者とFA、何が違うのか
  2. 手数料はどう決まるのか
  3. 仲介者に構造的にある利益相反リスク
  4. 専任条項とテール条項に潜む落とし穴
  5. 実績はどこで、何を見て確認するのか
  6. 2026年に公表されたトラブル事例から学ぶこと
  7. 依頼前に確認しておきたい質問リスト
  8. セカンド・オピニオンという選択肢
  9. 基本情報まとめ
  10. 関連記事
  11. よくある質問

聞き手

M&Aを考え始めると、いろんな会社から連絡が来るんですよね。仲介会社、FA、金融機関系、士業系……。正直、何を基準に選べばいいのか分からなくて。

アドバイザー

最初はみなさんそうおっしゃいます。結論から言うと、見るべきポイントは手数料体系と利益相反の構造、そして実績の中身の3つです。今日はこの3つを、契約書にサインする前に確認できる質問の形にして整理していきます。

聞き手

お願いします。ちなみに、仲介会社とFAって、そもそも何が違うんですか?よく両方の名前を見るんですけど。

アドバイザー

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」では、両者を明確に分けて定義しています。仲介者は譲渡側と譲受側の両方と契約を結んでマッチング支援を行う立場です。一方でFA(フィナンシャル・アドバイザー)は、どちらか一方とだけ契約を結びます。

聞き手

ということは、仲介会社は売る側と買う側、両方から手数料をもらう、ということですか?

アドバイザー

そのとおりです。それ自体は違法でも特殊なことでもありません。中小M&Aの実務では、FAよりも仲介という形態のほうが広く使われているのが現状です。ただし、この「両方から報酬を受け取る」という構造が、後で話す利益相反の話につながってきます。

仲介者とFA、何が違うのか

アドバイザー

このセクションでは、まず立場の違いを整理します。仲介者は両当事者の間に立って調整役を担うのに対して、FAはどちらか一方の代理人として、その依頼者の利益を最優先に動きます。

聞き手

立場が違うと、やってくれることも変わってくるんですか?

アドバイザー

変わります。FAは依頼者の利益を最大化する方向で交渉します。仲介者は双方の利益が対立する場面で、中立性を保つ義務があるため、一方の肩を持つような交渉の代理はできません。譲渡額を強く吊り上げる交渉をしてほしいなら、仲介者よりFAのほうが向いている場合があります。

聞き手

じゃあ、FAのほうが自分の味方になってくれるんですね。

アドバイザー

依頼者にとってはそうです。ただしFAは片方の依頼しか受けないので、相手方を見つけてくる力(マッチング力)は仲介者のほうが強いことが多いです。仲介者は最初から両側の情報を持っているので、候補先を早く見つけやすいという実務上のメリットがあります。どちらが優れているという話ではなく、自分が何を優先したいかで選ぶものだと考えてください。

項目 仲介者 FA(フィナンシャル・アドバイザー)
契約する相手 譲渡側・譲受側の両方 譲渡側・譲受側のどちらか一方
立場 両者の間の中立的な調整役 依頼者一方の代理人
マッチング力 両側の情報を持つため強い傾向 相手探しは他の手段と併用することも
交渉の代理 一方の肩を持つ交渉代理はできない 依頼者の利益を最大化する交渉ができる
手数料 双方から受け取ることが通常 依頼した一方からのみ受け取る

聞き手

手数料はどっちも同じような仕組みなんですか?次はそこが気になります。

手数料はどう決まるのか

仲介者・FAの手数料4類型を示す図解 着手金 月額報酬 中間金 成功報酬

アドバイザー

このセクションでは、手数料の内訳を分解します。中小M&Aガイドラインによれば、料金体系として多く見られるのは着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の4つです。ただし、これは「よくある例」であって、法律で決まった型があるわけではありません。

聞き手

4つも払うんですか?結構な負担になりそうですけど。

アドバイザー

全部を請求する会社もあれば、着手金・月額報酬・中間金を一切取らず、成功報酬だけを請求する「完全成功報酬型」の会社もあります。どちらが良い悪いではなく、それぞれに一長一短があります。

手数料の種類 発生するタイミング 特徴
着手金 仲介契約・FA契約の締結時 成立しなくても返金されないことが多い
月額報酬 毎月一定額 リテーナーフィーとも呼ばれる。契約期間の長さに注意
中間金 基本合意の締結時など 成功報酬の内金として扱われることもある
成功報酬 クロージング(最終契約の履行)時 多くはレーマン方式で算定。最低手数料が設定されることが多い

聞き手

着手金を払ったのに、結局M&Aが成立しなかったらどうなるんですか?

アドバイザー

着手金は基本的に戻ってきません。完全成功報酬型の会社を選べば、成立しなければ費用がゼロになる代わりに、成立時の成功報酬率がやや高めに設定されている、というのが一般的な傾向です。ここは契約前に必ず確認してください。

聞き手

成功報酬の「レーマン方式」って言葉、よく聞くんですけど、仕組みがよく分かってなくて。

アドバイザー

レーマン方式は、譲渡額(または移動総資産額、純資産額)を階層に分けて、それぞれの階層に違う料率を掛けて合計する計算方法です。中小M&Aガイドラインに載っている一例を見てみましょう。

POINT

レーマン方式の一例(中小M&Aガイドライン掲載)

  • 5億円以下の部分: 5%
  • 5億円超10億円以下の部分: 4%
  • 10億円超50億円以下の部分: 3%
  • 50億円超100億円以下の部分: 2%
  • 100億円超の部分: 1%

※あくまで一例です。階層の刻み方や料率は仲介者・FAごとに異なります。同じ「レーマン方式」という名前でも、中身は会社によって違うと考えてください。

聞き手

段階ごとに割合が変わるんですね。じゃあ、譲渡額が大きいほど、率は下がっていくと。

アドバイザー

そうです。ただし、ここで最低手数料という仕組みが重要になります。小規模な会社の譲渡だと、レーマン方式で計算した金額が小さくなりすぎて、依頼を受ける側の採算が合わなくなることがあります。そこで多くの登録支援機関が、最低手数料を設定しています。

聞き手

最低手数料があると、何が起きるんですか?

アドバイザー

例えば、架空の例ですが、成功報酬率が「譲渡額の5%、最低手数料500万円」という条件だったとします。譲渡額が5,000万円なら、単純計算で5%は250万円ですが、最低手数料の500万円が適用されるので、実際に払うのは500万円になります。率だけを見て安心してはいけない理由がここにあります。

CAUTION

率だけで比較すると失敗する

成功報酬率が低く見えても、最低手数料が高く設定されていれば、小規模な譲渡ほど実質的な負担率は跳ね上がります。見積もりを取るときは、必ず「率」と「最低手数料の金額」の両方を書面でもらってください。

聞き手

なるほど。ちなみに中小企業庁のガイドラインには、実際の金額の目安みたいなものも載ってるんですか?

アドバイザー

令和6年8月時点の中小M&Aガイドラインには、参考事例として、事業承継・引継ぎ支援センターの登録機関に依頼して、6か月かけて譲渡額1億円の株式譲渡が成立したケースが載っています。着手金100万円(税抜)に加えて、成功報酬はレーマン方式(基準は譲渡額、最低手数料500万円・税抜)で計算する、という設計でした。これはあくまで一例ですが、着手金と成功報酬を合わせるとどのくらいの規模になるか、イメージをつかむのに役立ちます。

聞き手

手数料の話は分かりました。じゃあ、さっき出てきた「利益相反」の話をもう少し詳しく聞きたいです。

仲介者に構造的にある利益相反リスク

仲介者が譲渡側と譲受側の両方から手数料を受け取る構造を示す三角関係の図解

アドバイザー

このセクションでは、仲介者という立場そのものに組み込まれているリスクを説明します。中小M&Aガイドラインは、この点をかなり率直に書いています。仲介者は譲渡側・譲受側の両方から依頼を受けて、両者の利害を調整する立場にあります。ところが譲渡額は、譲渡側にとっては高いほうがよく、譲受側にとっては安いほうがいい。構造的に利益が対立する部分があるわけです。

聞き手

その状態で、仲介者はどちらの味方をするんですか?

アドバイザー

どちらの味方もしてはいけない、というのがガイドラインの立場です。ただ、リピーターになりやすい譲受側(買い手企業は何度もM&Aをする可能性がある)を優遇する動機が生まれやすい、という指摘があります。逆に、譲渡額が上がるほど手数料も増える仕組みなら、譲渡側の利益を優先する動機も働く、という見方も併記されています。利益相反があること自体は、直ちに違法ではありません。問題は、それを隠したまま契約することです。

聞き手

隠さずに、どう対応すればいいんですか?

アドバイザー

ガイドラインは仲介者に対して、最低限の対応を求めています。まず、両当事者から手数料を受け取る立場であることを、両方に伝えること。そして、企業価値評価やデュー・ディリジェンス(DD、買収監査のことです)のように、一方の意向に左右されやすい工程については、仲介者自身が結論を決めないこと。特にDDについては、仲介者自身が実施すべきではない、とまで書かれています。

聞き手

DDは仲介者じゃない誰かがやるべき、ということですね。

アドバイザー

そうです。DDは譲受側が依頼する別の専門家、または譲受側自身が行うのが原則です。仲介者が「うちがDDまでやりますよ」と言ってきたら、それがガイドラインの想定とずれていないか、一度確認したほうがいいです。

POINT

仲介者がやってはいけないと明記されている行為

  • 譲受側から追加の手数料を受け取って、その譲受側に有利になるよう譲渡額を低く誘導すること
  • リピーターになりやすい依頼者を優遇して、他方の利益を害すること
  • 一方が伝えてほしいと言った情報を、他方に伝えないこと、または事実と異なる内容を伝えること
  • 一方にとってのみ有利・不利な情報を知りながら、それを隠すこと

これらは中小M&Aガイドラインで「行ってはならない」と明記され、仲介契約書に禁止行為として定めることが求められています。

聞き手

これ、自分が今その状態に置かれてるかどうか、どうやって気づけばいいんですか。

アドバイザー

契約前の説明の場で、相手の手数料体系について聞いてみてください。「相手方(買い手側、あるいは売り手側)からいくら受け取る契約になっていますか」と聞いて、はっきり答えられない、あるいは答えを濁す会社は、一度立ち止まったほうがいいです。ガイドライン上、この開示は義務とされています。

聞き手

契約の中身についても、注意すべき条項ってあるんですか?

専任条項とテール条項に潜む落とし穴

アドバイザー

このセクションでは、契約書の中でも特にトラブルになりやすい2つの条項を扱います。専任条項とテール条項です。名前だけ見るとピンとこないかもしれませんが、内容を知らずにサインすると、後で身動きが取れなくなることがあります。

聞き手

専任条項から教えてください。

アドバイザー

専任条項は、契約している間、他の仲介会社やFAに並行して依頼することを禁止する条項です。同じ買い手候補に複数の仲介会社から重ねて話が行くと、相手の印象を悪くしますし、情報も広がりやすくなるので、それ自体には一定の合理性があります。

聞き手

でも、他の意見を聞きたくなることもありますよね。

アドバイザー

そこがポイントです。ガイドラインは、専任条項があっても、依頼者が意見を求めたい部分を明確にして、それを妨げる合理的な理由がない限り、セカンド・オピニオンを求めることは許容されるべき、としています。契約期間についても目安が示されていて、専任条項を伴う契約は最長でも6か月から1年以内が目安です。これより長い期間を求められたら、なぜその長さが必要なのか、理由を聞いてください。

聞き手

テール条項のほうは、聞いたことがない言葉です。

アドバイザー

テール条項は、契約が終了した後も、一定期間内にM&Aが成立したら、元の仲介会社やFAに手数料を払うという条項です。契約を切ってから、その会社が紹介してくれた相手と直接交渉して契約を逃れる、というケースを防ぐための条項で、これにも一定の合理性はあります。

聞き手

どのくらいの期間、この条項は効いてくるんですか?

アドバイザー

ガイドラインの目安は最長でも2年から3年以内です。また、対象になるのは「その仲介会社が実際に関与して、名前を開示して紹介した相手」に限られるべきだとされています。ロングリストに載っていただけの会社まで対象に含めるような、無限定なテール条項は、ガイドラインの想定を超えています。

CAUTION

専任条項・テール条項のチェックポイント

契約書にサインする前に、次の2点を必ず数字で確認してください。「専任条項の期間は何か月ですか」「テール条項は何年で、対象はどの会社に限られますか」。口頭の説明ではなく、契約書の条文で確認することが重要です。

聞き手

契約の話は分かりました。次は、そもそも「この会社に頼んで大丈夫か」をどう判断するかが知りたいです。実績の見方を教えてください。

実績はどこで、何を見て確認するのか

アドバイザー

このセクションでは、依頼する前に実績を確認する方法を説明します。中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAの選定にあたって、業務形態、業務範囲・内容、契約期間、報酬体系、M&Aに取り組んだ件数・年数、利用者の声を確認したうえで、複数の会社を比較検討することが重要だとしています。

聞き手

「成約件数〇〇件」みたいな数字は、ホームページによく載ってますけど、あれをそのまま信じていいんですか?

アドバイザー

数字の定義を確認したほうがいいです。「相談件数」なのか「マッチング件数」なのか「成約件数」なのかで、意味がまったく違います。また、グループ会社全体の累計なのか、その担当者個人の実績なのかも確認したほうがいいです。数字そのものより、その数字が何を数えたものかを聞くことのほうが実は重要です。

聞き手

個人任せで比較するのは難しそうですね。何か公的なデータベースみたいなものはないんですか?

アドバイザー

あります。中小企業庁が運営する「M&A支援機関登録制度」のデータベースです。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した仲介者・FAが登録されていて、令和6年8月30日時点の公表では2,700件を超える支援機関が登録されています。このデータベースでは、支援機関の種類(M&A専門業者か金融機関かなど)、M&A支援業務を始めた時期、専従の担当者数、そして手数料の算定基準まで確認できます。

聞き手

手数料の基準まで公開されてるんですか。

アドバイザー

令和6年度から、登録の要件として手数料体系の公表が義務化されました。令和6年8月23日時点で準備の整った2,618件の登録支援機関について、手数料体系の公表が始まっています。ここで確認できる手数料は「標準的な体系」として報告されたものなので、個別の案件では変わる可能性がある、という注記は付いています。それでも、契約前の比較材料としては十分に使えます。

STEPS

  1. M&A支援機関登録制度のデータベースで、候補の会社が登録されているか確認する
  2. 登録されていれば、公表されている手数料体系(着手金・成功報酬率・最低手数料)を書き写す
  3. 候補を2〜3社に絞り、同じ質問リストを使って個別に説明を受ける
  4. 説明の内容と、データベースの公表内容が一致しているか照らし合わせる
  5. 疑問が残る場合は、契約前に事業承継・引継ぎ支援センターへセカンド・オピニオンを相談する

聞き手

逆に、登録されていない会社に頼むのは危ないんですか?

アドバイザー

登録されていないからといって、即座に問題があるとは言えません。ただ、登録には中小M&Aガイドラインの遵守宣言が条件になっているので、登録の有無は最低限の確認事項として見ておいたほうがいいです。登録されているかどうかは、データベースで無料で確認できます。

聞き手

ここまでは制度の話でしたけど、実際にトラブルになった話も聞いてみたいです。最近、何か公表されたものはあるんですか?

2026年に公表されたトラブル事例から学ぶこと

アドバイザー

このセクションでは、直近の公表資料を紹介します。M&A支援機関登録制度事務局は、令和8年9月1日付けで「不適切な営業行為に係るトラブルの発生を踏まえた対応について」という資料を公表しました。過去に一度、注意を受けた登録支援機関が、再び中小M&Aガイドラインの趣旨に反する行為をしたとして、改めて注意が発出された、という内容です。

聞き手

具体的にはどんな行為だったんですか?

アドバイザー

広告・営業を止めてほしいと意思表示した相手に対して、その意思が適切に反映されず、営業が再開された、という事案です。事務局は、同様の事案が再度確認された場合には社名公表や登録の取消しを含めた対応を検討するとしています。

聞き手

会社名は公表されなかったんですね。

アドバイザー

今回は所在地(都道府県名)のみの公表でした。同じ資料には、これまでに寄せられた相談の類型も紹介されています。

POINT

実際に寄せられた相談の類型(M&A支援機関登録制度事務局 令和8年9月1日公表)

  • 事例1: サービスの履行が不十分だったり、契約の条件を守らないなど、不誠実な対応を受けた
  • 事例2: 成功報酬は売却代金の5%と聞いていたが、最低報酬金額が適用され、想定より高い手数料になった
  • 事例3: 譲渡金額の評価手法や前提条件について、事前の説明がなかった
  • 事例4: 仲介者が自らDDを実施していたことなどでDDが不十分だった。専門家の意見を求められることも知らされていなかった

聞き手

事例4はさっきのDDの話、事例2は最低手数料の話と、今日聞いてきた内容とそのままつながってますね。

アドバイザー

そうなんです。制度や条文の話として聞くと抽象的に感じるかもしれませんが、実際に寄せられる相談は、今日話してきたポイントとほぼ重なっています。だからこそ、契約前にこれらを確認しておく価値があります。

聞き手

もし自分が同じような目に遭ったら、どこに相談すればいいんですか?

アドバイザー

M&A支援機関登録事務局内に情報提供受付窓口が設置されています。匿名でも情報提供できますし、契約に秘密保持条項があっても、この窓口に相談したこと自体を理由に不利益な扱いを受けないと、登録支援機関は誓約しています。ただし、この窓口は紛争解決や助言を行う場所ではない、という点は理解しておいてください。個別の交渉や解決には、弁護士への相談が必要になります。

聞き手

ここまでのポイントを、依頼前に聞く質問としてまとめてもらえますか?

依頼前に確認しておきたい質問リスト

アドバイザー

このセクションでは、今日の内容を実際に使える質問の形にまとめます。契約書にサインする前、初回の面談やその次の面談で、遠慮せずに聞いてください。

POINT

契約前に確認する質問リスト

  • 御社は仲介者ですか、それともFAですか
  • 手数料の内訳(着手金・月額報酬・中間金・成功報酬)はそれぞれいくらですか
  • 成功報酬の基準となる価額は、譲渡額・移動総資産額・純資産額のどれですか
  • 最低手数料はいくらに設定されていますか
  • 御社はM&A支援機関登録制度に登録されていますか
  • 相手方(もう一方の当事者)からも手数料を受け取りますか。受け取る場合、その体系はどうなっていますか
  • デュー・ディリジェンス(DD)は誰が実施しますか。御社自身が実施することはありますか
  • 専任条項はありますか。ある場合、期間は何か月ですか
  • テール条項はありますか。ある場合、期間は何年で、対象はどの会社に限られますか
  • 直近の成約件数を教えてください。その件数は何を数えたものですか

聞き手

これ、全部その場でメモしておいたほうがよさそうですね。

アドバイザー

できれば、口頭の回答だけでなく書面やメールで残しておくことをおすすめします。後になって「言った・言わない」の話にならないようにするためです。トラブル事例の事例2、事例3も、事前の説明が書面で残っていれば防げた可能性が高いものです。

聞き手

セカンド・オピニオンって言葉も出てきましたけど、これはどう使えばいいんですか?

セカンド・オピニオンという選択肢

アドバイザー

このセクションでは、契約前後に使える相談先を紹介します。契約している仲介会社・FAとは別に、他の専門家に意見を求めることをセカンド・オピニオンと呼びます。同業の別の仲介会社に聞く場合と、士業や公的機関に聞く場合の2種類があります。

聞き手

別の仲介会社に聞くのと、公的機関に聞くのとで、何か違いはあるんですか?

アドバイザー

同業の仲介会社に意見を求める場合、その会社が営業の機会と捉えてしまい、意見が中立的でなくなる可能性がある、とガイドラインは指摘しています。譲渡額の決め方や最終契約の内容など、重要な判断をするときは、士業の専門家や、全国に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターに相談するほうが望ましいとされています。

聞き手

事業承継・引継ぎ支援センターって、どこにあるんですか?

アドバイザー

令和6年8月時点で、全国47都道府県48か所(東京都のみ千代田区と立川市の2か所)に設置されている、国の委託を受けた公的な相談窓口です。地域金融機関のOBや、公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士といった専門家が常駐しています。相談自体は無料です。

聞き手

無料なら、まず一度相談してみるのもありですね。

アドバイザー

はい。ただし、既に契約している仲介会社・FAとの間に秘密保持条項がある場合は、相談先をその対象から外してもらうなど、事前の調整が必要になることがあります。この調整は専門的な判断が絡むので、弁護士にご相談ください。契約書の解釈や解約の可否について、この記事の内容だけで判断しないでください。

聞き手

税金の計算とか、そのあたりもこの記事では踏み込まないんですよね。

アドバイザー

そうです。譲渡益にかかる税金の計算や、具体的な節税の判断は税理士にご相談ください。私たちが今日話したのは、あくまで「誰に依頼するか」を決めるための確認事項です。実際の税務・法務の判断は、それぞれの専門家の領域になります。

基本情報まとめ

アドバイザー

最後に、今日の内容を一覧にまとめておきます。契約前のチェックとして、手元に置いておいてください。

項目 確認先・内容
仲介者・FAの区分 契約書・説明資料で確認。両方から手数料を取るのは仲介者
手数料体系 着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の内訳と金額
成功報酬の基準 譲渡額・移動総資産額・純資産額のいずれか
最低手数料 金額を必ず書面で確認
登録の有無 M&A支援機関登録制度データベース(ma-shienkikan.go.jp)
専任条項の期間 目安は最長6か月〜1年
テール条項の期間・対象 目安は最長2〜3年。対象は紹介された相手に限定されるべき
トラブル相談窓口 M&A支援機関登録事務局 情報提供受付窓口(匿名可)
セカンド・オピニオン 事業承継・引継ぎ支援センター(全国48か所、相談無料)
税務・法務の最終判断 税理士・弁護士に相談

聞き手

これだけ質問を用意していけば、少なくとも「何も聞かずに契約してしまった」ということは避けられそうです。

アドバイザー

それが一番大事なことです。M&Aの手数料や契約条項に、絶対的な正解はありません。会社ごとに体系が違うからこそ、比較する材料を自分で持っておくことが、依頼先を選ぶときの一番の武器になります。

関連記事

聞き手

今日の話と合わせて読んでおいたほうがいい記事はありますか?

アドバイザー

手数料の仕組みをもう少し掘り下げたい方は、仲介会社の手数料はなぜ一律なのかもあわせて読んでみてください。また、依頼した後に相手企業を見極める視点として、買ってはいけない会社の見分け方、提示された金額の妥当性を検証したい方には、提示された株価は妥当なのかも参考になります。

よくある質問

聞き手

最後にいくつか、細かい疑問を質問させてください。仲介会社とFA、結局どちらを選べばいいんですか?

アドバイザー

一概には言えません。相手探しのスピードを優先するなら仲介者、自分の利益だけを代弁してほしいなら FA、という傾向はありますが、会社ごとの実力差のほうが、仲介かFAかという分類より大きいことも多いです。両方に会って比較することをおすすめします。

聞き手

着手金を取らない会社のほうが良心的ということですか?

アドバイザー

一概には言えません。着手金を取らない代わりに、成功報酬率が高めに設定されていることもあります。総額でいくらになるかを試算して比較することが大切です。

聞き手

セカンド・オピニオンを求めたら、今の仲介会社に嫌な顔をされませんか?

アドバイザー

ガイドライン上、依頼者が意見を求めたい部分を明確にしたうえでのセカンド・オピニオンは、原則として妨げるべきではないとされています。それでも難色を示すようであれば、その対応自体が会社を見極める材料になります。

聞き手

今日話してもらった質問リストは、初回面談でいきなり聞いてもいいんですか?

アドバイザー

むしろ初回面談で聞くべき内容です。契約直前になって聞くと、時間的なプレッシャーの中で流されやすくなります。比較検討している段階から、同じ質問を複数の会社にぶつけるのが確実です。

SOURCES

公開 2026.09.20更新 2026.09.21文 NEW ORDER JOURNAL 編集部

会社の譲渡や譲受について、まだ誰にも話していない段階のご相談も承ります。

相談する

OTHER ARTICLES

記事の一覧へ