NEW ORDER

M&Aの現場

仲介会社の再編期に見る三点

契約・費用・役割

IN BRIEF

  1. 再編のニュースより、契約書の期間・費用・役割の三点を見るほうが、依頼先の判断に直結する。
  2. 登録された支援機関は2026年9月24日時点で3,362件。選べる相手は、登録上は増えている。
  3. 提案を受けたその場で決めず、複数社に同じ質問をして比べ、公的な窓口にも相談できる。
CONTENTS3の見出し
  1. 数字で確かめられる業界の姿
  2. 再編期に確かめる三つの点
  3. 提案を受けた日にできること

聞き手

提案を受けている仲介会社について、別の会社に買われたという話を耳にしました。依頼したあとに運営会社が変わったら、私の案件はどうなるのでしょうか。

アドバイザー

先に範囲を決めます。個別の会社の再編については、官公庁などの一次情報で確かめられる事実が限られるので、この記事では扱いません。扱うのは、再編のニュースが出たときに、依頼する側が何を見て判断するかです。

聞き手

個別の事実を扱わずに、判断の材料になるのでしょうか。

アドバイザー

なります。依頼者の案件に直接かかわるのは、親会社の名前ではなく、契約書に書かれた条件と、実際に動く担当者です。誰が持ち主かより、契約に何が書いてあるかのほうが、判断に使えます。

数字で確かめられる業界の姿

M&A支援機関登録制度の登録件数を2024年8月と2026年9月24日で比べた図解

アドバイザー

このセクションでは、確かめられる数字だけを見ます。中小企業庁はM&A支援機関登録制度を令和3年8月に創設しました。令和6年8月30日の公表では、登録は2,700件超でした。令和8年9月24日時点では3,362件で、内訳は法人2,590件、個人事業主772件です。

時点 登録件数 出典
令和6年8月30日の公表 2,700件超 中小企業庁
令和8年9月24日 3,362件(法人2,590件、個人事業主772件) 中小企業庁

聞き手

件数が増えているなら、再編は関係ないということですか。

アドバイザー

関係ないとは言えません。この数字は「登録された数」で、合併や買収で消えた会社の動きまでは分かりません。言えるのは、登録上の選択肢は増えているところまでです。

聞き手

登録されていれば、安心して頼んでよいのでしょうか。

アドバイザー

そこは慎重に見てください。登録は、中小M&Aガイドラインの遵守の宣言などを要件にしています。登録は、中小M&Aガイドラインを守るという宣言を前提にした印であって、会社の質を保証する印ではありません。令和8年9月1日には、不適切な広告・営業で過去に注意を受けた登録機関1社へ、再度の注意が出されたと公表されました。社名は伏せられ、所在地の都道府県だけが示されています。

聞き手

登録の有無だけでは足りないなら、何を見ればよいのですか。

登録は、中小M&Aガイドラインを守るという宣言を前提にした印であって、会社の質を保証する印ではありません。

再編期に確かめる三つの点

依頼先を見る三つの点、契約、費用、役割を並べた図解

アドバイザー

このセクションの中心は、契約、費用、役割の三つです。順に話します。まず契約です。中小M&Aガイドラインは、専任条項について、最長でも6か月から1年以内が目安、テール条項について、最長でも2年から3年以内が目安としています。

聞き手

専任とテールは、それぞれ何のことですか。

アドバイザー

専任は、その仲介者だけに依頼し、他社に並行して頼まない約束です。テールは、契約が終わったあとも一定期間、その仲介者が紹介した相手と成約すれば報酬が発生する取り決めです。架空の例です。契約書に専任18か月、テール4年と書かれていたら、目安を超えているので、理由を聞いてください。

POINT

再編期に、契約の期間が重くなる理由

  • 専任の期間が長いほど、体制が変わったあとも、他社に頼み直せない期間が長くなる
  • テールの期間が長いほど、乗り換えたあとにも報酬の請求が残る可能性が続く
  • 期間の根拠を、契約前に書面か口頭で説明してもらう
  • 運営会社の体制が変わったときの扱いが契約書にあるかは、弁護士に確認する

聞き手

二つ目の費用は、率を見れば足りますか。

アドバイザー

足りません。令和8年9月1日の公表資料には、成功報酬は売却代金の5%と聞いていたのに、最低報酬金額が適用されて想定より高い手数料になった、という事例が載っています。架空の例で計算します。譲渡額が8,000万円で、成功報酬5%、最低手数料500万円とします。5%なら400万円ですが、支払うのは500万円です。

聞き手

手数料は、契約の前にどこで確かめられますか。

アドバイザー

令和6年度から、登録の要件として、手数料体系を公表することが義務付けられました。令和8年4月20日には、手数料の簡易計算ツールも公開されています。公表されているのは標準的な体系で、案件ごとの実際の手数料は異なる場合がある点は、押さえてください。

CAUTION

率だけで比べると、総額を読み違える

成功報酬の率が低くても、最低手数料が高ければ、小さな譲渡ほど負担は重くなります。見積もりは、率と最低手数料の金額、着手金や中間金の有無を、書面で並べて比べてください。

聞き手

三つ目の役割は、利益相反とデュー・ディリジェンスのことですか。

アドバイザー

そうです。デュー・ディリジェンス、略してDDは、買う側が相手の会社を調べる買収監査です。ガイドラインは、仲介者が自らDDを実施すべきでないとしています。事務局の資料にも、仲介者が自らDDを実施していたためDDが不十分で、弁護士や会計士に意見を求められることも知らされなかった、という事例があります。

聞き手

再編があると、この役割はどう変わるのでしょうか。

アドバイザー

変わるかどうかは、会社ごとに違います。だから質問の形で確かめます。資本関係のある買い手候補はいるのか。その候補を優先して紹介する決まりはあるのか。DDは誰が行うのか。再編のニュースが出たときに見るのは親会社の名前ではなく、契約書の期間と費用と役割の三点です。

聞き手

三点が分かったとして、提案を受けたその場では何をすればよいのですか。

再編のニュースが出たときに見るのは親会社の名前ではなく、契約書の期間と費用と役割の三点です。

提案を受けた日にできること

アドバイザー

このセクションは、手順に落とします。決めるのを急がないことが、最初の一手です。

STEPS

  1. 契約書案をもらい、専任・テールの期間、最低手数料、DDの担当に印を付ける
  2. 二社以上に同じ質問をして、答え方と総額を並べて比べる
  3. 気になる点は、契約前にセカンド・オピニオンとして外部の専門家に見てもらう
  4. 不適切と感じる営業や対応があれば、情報提供受付窓口に伝える

聞き手

複数社を比べるのは、当然のことなのでしょうか。

アドバイザー

ガイドラインも、複数の仲介者・FAから比較検討して決めることが重要だとしています。事業承継・引継ぎ支援センターは、令和6年8月時点で全国47都道府県48か所に設置され、セカンド・オピニオンの相談先になります。情報提供受付窓口は匿名でも利用できます。登録機関は、窓口に相談したことだけを理由に不利益な扱いをしないと、登録時に誓約しています。

確認したいこと 相談先
契約期間・手数料の比較 複数の登録支援機関、公表されている手数料体系
第三者の意見 事業承継・引継ぎ支援センター
不適切な営業・対応 M&A支援機関登録事務局の情報提供受付窓口(匿名可)
契約条項の法律面、税務 弁護士、税理士

CAUTION

法律と税務の判断は、専門家へ

契約条項の有効性や、運営会社の変更が契約に与える影響は、法律上の判断です。弁護士にご確認ください。報酬や譲渡の税務上の扱いは、税理士にご相談ください。

聞き手

費用や選び方を、もう少し詳しく読める記事はありますか。

アドバイザー

依頼先の選び方はM&Aアドバイザーを何で選ぶかに、手数料の仕組みは仲介会社の手数料はなぜ一律なのかにまとめています。再編のニュースで迷ったときも、見る場所は同じです。契約の期間、費用の総額、利益相反と役割の三点を、書面で確かめてください。

QUESTION

いま手元にある契約書案で、専任とテールの期間は、何か月と何年になっていますか。

FAQ

仲介会社が買収されると、契約はどうなりますか。
契約の扱いは個別の契約書によって異なり、法律上の判断になります。専任・テールの期間、体制変更時の取り決めの有無を確認し、弁護士にご相談ください。
登録されている支援機関なら安心ですか。
登録は中小M&Aガイドラインの遵守の宣言などを要件とするもので、質の保証ではありません。手数料体系や契約条件は、登録機関でも個別に確かめてください。
手数料は契約前にどこで確認できますか。
M&A支援機関登録制度のホームページで、登録機関の標準的な手数料体系が公表されています。案件ごとの実際の手数料は異なる場合があります。
不適切な対応を受けたと感じたらどうすればよいですか。
M&A支援機関登録事務局の情報提供受付窓口に、匿名でも情報を提供できます。法律面の判断は弁護士にご相談ください。

SOURCES

公開 2026.10.09文 NEW ORDER JOURNAL 編集部

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